抜け毛が多いのは病気のサイン?医師に相談すべき症状

「最近、枕元に落ちている髪の毛が急に増えた気がする……」
「ブラッシングのたびに、ごっそりと髪が抜けて怖い」
毎日鏡を見るたびに、このような不安に襲われていませんか?季節の変わり目や一時的なストレスであれば、時間の経過とともに落ち着くこともあります。しかし、もしその抜け毛が体が発している病気のサインだとしたら、悠長に様子を見ている時間はありません。
髪は「健康のバロメーター」とも呼ばれ、内臓の不調やホルモンバランスの乱れをいち早く反映することがあります。これから、単なるケア不足では片付けられない、医療機関での治療が必要な抜け毛の原因と症状について詳しく解説していきます。漠然とした不安を解消し、適切なアクションを起こすための手助けとなれば幸いです。
目次
1. 抜け毛と内科的疾患(甲状腺、貧血)の関連性
抜け毛が増えたとき、多くの人は「シャンプーが合っていないのかな?」「最近忙しかったからかな」と、頭皮環境や生活習慣に原因を求めがちです。しかし、実は頭皮そのものではなく、体の内部で起きている病変が直接的な原因となっているケースは決して珍しくありません。
特に見落とされがちなのが、内科的な疾患による脱毛です。ここでは、代表的な2つの疾患と抜け毛の関連性について深掘りしていきます。
甲状腺機能の異常が招くヘアサイクルの乱れ
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活発にする「エンジンのような役割」を果たしています。このホルモンの分泌バランスが崩れると、髪の毛の成長サイクルに深刻な影響を及ぼします。
- 甲状腺機能低下症(橋本病など):
代謝が落ちることで、髪を生やすためのエネルギーが不足します。結果として、髪が細く弱くなり、休止期(髪が抜ける時期)が長引いてしまいます。全体的にボリュームが減り、パサつきが目立つのが特徴です。 - 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):
逆に代謝が異常に高まることで、ヘアサイクルが早回りしすぎることがあります。成長しきる前に髪が抜けてしまうため、結果として抜け毛の量が増加します。
「最近、以前よりも疲れやすくなった」「汗をかきやすくなった、あるいは寒がりになった」といった体調の変化と同時に抜け毛が気になる場合は、甲状腺の検査を検討する必要があります。
鉄欠乏性貧血による酸素不足と毛根の栄養失調
特に女性に多いのが、隠れ貧血(フェリチン不足)による抜け毛です。血液中のヘモグロビンは、酸素を体中に運ぶ重要な役割を担っていますが、鉄分が不足するとこの働きが低下します。
人間の体は生命維持を最優先にするため、栄養や酸素は心臓や脳などの重要臓器へ優先的に送られます。悲しいことに、髪の毛や爪といった末端の組織は、栄養配給の優先順位が最も低いのです。
- 体内の貯蔵鉄(フェリチン)が減少する。
- 毛乳頭への酸素供給が滞り、毛母細胞の分裂が低下する。
- 健康な髪が作れなくなり、抜けやすく細い髪が増える。
以下の表で、内科的疾患による抜け毛の特徴を整理しました。ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
膠原病などの自己免疫疾患の可能性
稀なケースではありますが、免疫システムが誤って自分の体を攻撃してしまう「自己免疫疾患(膠原病など)」の一症状として脱毛が現れることがあります。特に全身性エリテマトーデス(SLE)では、脱毛が初発症状となる こともあり、注意が必要です。
単なる抜け毛と自己判断せず、関節の痛みや微熱、皮膚の発疹などを伴う場合は、早急にリウマチ科や膠原病内科への相談が推奨されます。内臓からのSOSを見逃さないことが、早期発見・早期治療のカギとなります。
この章のチェックポイント
- ● 髪のパサつきや全体のボリュームダウンは甲状腺異常の可能性あり
- ● 立ちくらみや爪の異常を伴う抜け毛は、隠れ貧血を疑う
- ● 微熱や関節痛がある場合は、自己免疫疾患の検査を検討する
関連記事:女性必見!抜け毛の原因と驚きの対策法
2. 抜け毛の増加とストレス以外の原因
「ストレスが溜まっているから、髪が抜けるのは仕方ない」と諦めていませんか?確かにストレスは自律神経を乱し、血流を悪化させる大きな要因です。しかし、すべての原因をストレスだけに帰結させてしまうと、他の物理的・栄養的な要因を見逃してしまう恐れがあります。
ここでは、精神的な負担以外に考えられる、抜け毛を加速させる具体的な要因について解説します。
急激なダイエットと栄養不足
短期間で体重を落とすような無理なダイエットは、髪にとって最大の敵と言っても過言ではありません。食事制限によってタンパク質やミネラルが不足すると、体は生命維持に直結しない「髪の毛」への栄養供給を真っ先にストップさせます。
特に以下の栄養素が不足すると、健康な髪が育たず、成長途中で抜け落ちてしまいます。
- タンパク質(ケラチン): 髪の主成分。不足すると髪が細くなり、切れ毛や抜け毛の原因に。
- 亜鉛: 細胞分裂を促し、食べたタンパク質を髪に変えるために必須のミネラル。
- ビタミンB群: 頭皮の代謝を助け、皮脂バランスを整える役割。
「体重は減ったけれど、髪がボロボロになった」という事態を避けるためにも、食事内容の見直しは不可欠です。
ホルモンバランスの大きな変動(出産・更年期)
女性の場合、ライフステージによるホルモンの波が直接的に毛量に影響します。これは病気というよりも生理的な変化に近いですが、その変動幅が大きい場合、治療やケアが必要になることがあります。
- 産後脱毛症(分娩後脱毛症):
妊娠中に増加していた女性ホルモンが出産後に急激に減少することで、抜けずに残っていた髪が一気に抜け落ちる現象です。通常は半年〜1年で自然回復しますが、高齢出産や栄養不足が重なると回復が遅れることがあります。 - 更年期の薄毛(FAGAの進行):
閉経前後に女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、相対的に男性ホルモンの影響を受けやすくなります。これにより、頭頂部の分け目が広がったり、全体的に地肌が透けたりする症状が現れます。
薬剤による副作用の可能性
意外と知られていないのが、普段服用している薬の副作用 による抜け毛です。抗がん剤が脱毛を引き起こすことは有名ですが、それ以外の一見関係なさそうな薬でも、体質によっては影響が出ることがあります。
- 経口避妊薬(ピル): ホルモンバランスを操作するため、服用開始時や中止時に抜け毛が増えることがあります。
- 抗うつ薬・気分安定薬: 一部の薬剤で、ヘアサイクルが休止期に移行しやすくなる副作用が報告されています。
- 高脂血症治療薬・痛風治療薬: 長期間の服用により、稀に脱毛の副作用が現れる場合があります。
もし、新しい薬を飲み始めてから数ヶ月後に抜け毛が増えたと感じる場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず処方医や薬剤師に相談してください。薬の種類を変更することで改善する場合もあります。

3. 皮膚科を受診すべき抜け毛の形状と量
毎日のシャンプーで髪が抜けるのは自然な生理現象です。一般的には1日に50本〜100本程度の抜け毛であれば正常範囲とされています。しかし、重要なのは「本数」だけではありません。抜けた髪の状態(毛根の形や太さ) にこそ、危険なサインが隠されているのです。
ここでは、自宅ですぐに確認できるチェックポイントと、早急に受診すべき「異常な抜け毛」の特徴について解説します。
危険な毛根の形状をチェックする
自然に寿命を全うして抜けた健康な髪と、トラブルによって無理やり抜けてしまった髪では、毛根の形が全く異なります。落ちている髪を数本拾って、虫眼鏡やスマホのズーム機能で観察してみましょう。
- 正常な抜け毛(棍棒毛):
毛根部分がマッチ棒のように丸く膨らんでおり、白っぽくなっています。これは成長期を終えて自然に抜けた証拠です。 - 危険な抜け毛①(萎縮毛):
毛根に膨らみがなく、ヒョロヒョロと細くなっている、または黒っぽい場合。成長途中で栄養が断たれたり、攻撃を受けたりして抜けた可能性が高いです。AGAや円形脱毛症によく見られます。 - 危険な抜け毛②(先細り毛):
毛根だけでなく、毛先に向かっても極端に細く短い髪。十分に育つ前に抜けてしまった「未熟な髪」であり、ヘアサイクル異常の決定的な証拠です。
見逃してはいけない頭皮の随伴症状
抜け毛単体ではなく、頭皮に別の症状を伴っている場合は、皮膚の炎症が原因となっている可能性が高いです。特に「脂漏性皮膚炎」や「接触性皮膚炎」が悪化すると、毛根がダメージを受けて脱毛を引き起こします。
以下の症状がある場合は、育毛剤などでケアする前に、まず炎症を抑える治療が必要です。
- 強いかゆみやフケ: カビの一種(マラセチア菌)が繁殖している可能性があります。
- 頭皮の赤み・湿疹: アレルギーや炎症反応により、毛根が弱っています。
- 痛みやヒリヒリ感: 神経痛や帯状疱疹の予兆、あるいは極度の頭皮乾燥が疑われます。
受診の目安となる「抜け方」のパターン
抜け毛の量やパターンによっても、緊急度は異なります。以下の表で、ご自身の状況が「様子見で良いもの」なのか「すぐに受診すべきもの」なのかを確認してください。
セルフチェックのコツ
- ● 枕元の抜け毛を白いティッシュの上に置いて観察する
- ● 毛根が黒い、または極端に細い場合は異常のサイン
- ● 頭皮の赤みやかゆみを伴う場合は皮膚科領域のトラブル
4. 抜け毛と診断される可能性のある脱毛症の種類
「抜け毛」と一口に言っても、医学的には様々な種類に分類されます。それぞれ原因も治療法も全く異なるため、自分の症状がどのタイプに当てはまるのかを知っておくことは非常に重要です。
ここでは、代表的な脱毛症の種類と、その特徴的な症状について解説します。これらを知ることで、医師への相談もよりスムーズになるはずです。
円形脱毛症:突然の欠落と自己免疫
「10円ハゲ」という俗称で知られていますが、実は大きさも数も様々です。ある日突然、コインのように円形や楕円形に髪が抜け落ちるのが最大の特徴です。ストレスが引き金になることもありますが、根本的な原因はリンパ球が誤って毛根を攻撃してしまう自己免疫反応だと考えられています。
- 単発型: 1箇所だけ脱毛斑ができるタイプ。自然治癒することもあります。
- 多発型: 複数の脱毛斑ができ、それらが繋がって広がることもあります。
- 全頭型・汎発型: 頭髪全体、あるいは眉毛やまつ毛など全身の毛が抜ける重症例です。
円形脱毛症は進行が早いため、「小さなハゲだから」と放置せず、見つけたらすぐに皮膚科を受診することが推奨されます。
AGA(男性型脱毛症)とFAGA(女性男性型脱毛症)
テレビCMなどでもよく耳にするAGAは、遺伝や男性ホルモンの影響でヘアサイクルが短くなる進行性の脱毛症です。一方、女性に発症するものをFAGA(あるいはFPHL)と呼びます。
- AGAの特徴: 生え際が後退する(M字)、頭頂部が薄くなる(O字)といった局所的な変化が顕著です。放置すると進行し続けます。
- FAGAの特徴: 生え際のラインは保たれたまま、頭頂部から全体的に髪が細くなり、分け目が広がっていきます(クリスマスツリー様など)。
これらは「病気」というよりも体質や加齢現象に近い側面がありますが、早期に医学的な治療(内服薬や外用薬)を開始することで、進行を食い止めたり改善したりすることが十分に可能です。
休止期脱毛症とその他の脱毛症
上記以外にも、診断される可能性のある脱毛症はいくつか存在します。
- 休止期脱毛症:
高熱、手術、急激なダイエット、大きなストレスなどが原因で、成長期の髪が一斉に休止期に入ってしまい、その数ヶ月後に大量に抜ける症状です。原因が取り除かれれば、自然に回復することが多いです。 - 牽引性(けんいんせい)脱毛症:
ポニーテールやエクステなどで、長時間髪を強く引っ張り続けることで起こります。生え際や分け目の負担がかかる部分の髪が薄くなります。 - 瘢痕性(はんこんせい)脱毛症:
火傷や外傷、重度の感染症などで毛根組織が破壊され、傷跡(瘢痕)になった状態です。一度瘢痕化すると、残念ながらその部分から再び髪が生えることはありません。
関連記事はこちら:【女性の抜け毛対策】ストレス性抜け毛は回復する?
5. 血液検査でわかる抜け毛の原因
「皮膚科に行っても、ちらっと頭を見ただけで『加齢ですね』と言われないか不安……」
そんな心配を抱いている方も多いかもしれません。しかし、薄毛治療に力を入れているクリニックや、総合的な診断を行う皮膚科・内科では、血液検査のデータに基づいた客観的な診断 を行うことが可能です。
一般的な健康診断の項目だけでは、抜け毛の原因を特定するには不十分な場合があります。ここでは、抜け毛の原因を探るためにチェックすべき具体的な検査項目について解説します。
フェリチン(貯蔵鉄)の値を確認する
先述した通り、貧血は抜け毛の大きな要因ですが、一般的な健康診断で測る「ヘモグロビン値」が正常でも安心はできません。
見るべき数値は「フェリチン(貯蔵鉄)」です。これは体内に蓄えられている鉄の量を表します。ヘモグロビンがお財布に入っている現金だとすれば、フェリチンは銀行口座の貯金のようなものです。
- 基準値の落とし穴: 検査機関の基準値内であっても、毛髪の成長に必要なレベル(一般的に40〜50ng/mL以上が望ましいとされることも)を下回っていると、抜け毛の原因になり得ます。
- 対策: 数値が低い場合は、鉄剤の処方やサプリメントによる重点的な補給が行われます。
甲状腺ホルモン(TSH, FT3, FT4)の測定
甲状腺の異常は、視診だけでは判断が難しいため、血液検査が必須です。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン): 脳下垂体から分泌されるホルモン。甲状腺機能が低下していると、もっと働かせようとして数値が高くなります。
- FT3, FT4(遊離甲状腺ホルモン): 実際に血液中を流れている甲状腺ホルモンの量。
これらの数値に異常があれば、皮膚科ではなく、内分泌内科や甲状腺専門のクリニックでの治療が優先されます。根本の病気を治療することで、抜け毛も自然と改善に向かうケースが多いです。
亜鉛やその他の微量元素
髪の生成に不可欠な「亜鉛」の血中濃度も、血液検査で測定可能です。現代人は食生活の乱れやストレス、加工食品の摂取などにより、慢性的な亜鉛不足に陥っている人が少なくありません。
- 亜鉛欠乏症: 抜け毛だけでなく、味覚障害や皮膚炎、爪の変形などを引き起こします。
- 治療: 検査で欠乏が確定すれば、亜鉛製剤(ノベルジンなど)が保険適用で処方されることもあります。
「たかが抜け毛」と思わず、医療機関を受診する際は「内臓の病気がないか心配なので、血液検査もしてほしい」と医師に相談してみることを強くおすすめします。数値という「証拠」を見ることで、漠然とした不安が解消され、的確な対策が見えてくるはずです。
検査で見るべき重要項目
- ● ヘモグロビンだけでなく「フェリチン(貯蔵鉄)」をチェックする
- ● 甲状腺ホルモン(TSH, FT3, FT4)で代謝異常の有無を確認
- ● 髪の材料となる「亜鉛」の血中濃度も測定可能

6. 病気治療と並行して行うべき抜け毛対策
原因となっている病気が特定され、治療が始まったとしても、髪の毛が元通りになるまでには時間がかかります。髪の成長速度は1ヶ月に約1cm程度であり、休止期から成長期へ移行する準備期間も含めると、効果を実感するまでに最低でも3〜6ヶ月の期間が必要 だからです。
内科的な治療と並行して、日々の生活の中で頭皮環境を整え、発毛をサポートする「土台作り」を行うことが重要です。ここでは、治療の効果を最大限に引き出すために、今日から家庭で実践できるケアについて解説します。
頭皮への負担を最小限にする「やさしい洗髪」
抜け毛が気になると、洗髪時の抜け毛を見るのが怖くて、シャンプーの回数を減らしたり、指先だけで軽く済ませたりしていませんか?しかし、頭皮を不潔にすると皮脂が酸化し、かえって抜け毛を助長してしまいます。
病気による抜け毛で弱っている頭皮には、以下の手順での「いたわり洗髪」を推奨します。
- 予洗いを3分間行う:
シャンプーをつける前に、ぬるま湯(38度前後)で髪と頭皮を十分に濡らします。実は、これだけで汚れの約8割は落ちます。熱すぎるお湯は必要な皮脂まで奪い、頭皮を乾燥させるので避けましょう。 - シャンプーは手のひらで泡立ててから:
原液を直接頭皮につけるのは刺激が強すぎます。洗顔ネットなどを使い、モコモコの泡を作ってから頭皮に乗せ、指の腹で泡をクッションにして優しく揉み洗いします。 - すすぎは洗いの倍の時間をかける:
洗浄成分が頭皮に残ると、炎症の原因になります。特に耳の後ろや生え際は洗い残しが多いので念入りに流してください。
発毛エネルギーを補給する食事戦略
病気の治療中は、体が回復のために多くのエネルギーを消費しています。髪にまで栄養を行き渡らせるためには、意識的に「髪の材料」となる栄養素を摂取する必要があります。
特定の食材ばかりを食べるのではなく、以下の栄養素をバランスよく組み合わせることがカギとなります。
- 良質なタンパク質(大豆製品、鶏むね肉、魚):
髪の主成分であるケラチンの元になります。特に植物性タンパク質(大豆)に含まれるイソフラボンは、ホルモンバランスを整える働きも期待できます。 - ビタミンB群と亜鉛(レバー、牡蠣、ナッツ類):
タンパク質を髪に合成する際に必須の栄養素です。治療薬の影響で胃腸が弱っている場合は、消化の良い調理法を選びましょう。 - 抗酸化成分(緑黄色野菜、ビタミンC、E):
ストレスや病気によって体内で発生した活性酸素を除去し、血管の老化を防ぎます。頭皮の血流維持に役立ちます。
睡眠の質を高めて成長ホルモンを味方につける
髪の毛が最も成長するのは、寝ている間です。特に、入眠直後の深い眠り(ノンレム睡眠)の間に分泌される成長ホルモンは、ダメージを受けた細胞を修復し、毛母細胞の分裂を促す重要な役割を担っています。
「睡眠不足はハゲる」というのは迷信ではなく、医学的な根拠があるのです。日付が変わる前にベッドに入り、最低でも6時間以上の質の高い睡眠を確保するよう心がけてください。寝る直前のスマートフォンの使用は、交感神経を刺激して睡眠の質を下げるため、控えるのが賢明です。
自宅ケア成功の3つのポイント
- ● シャンプーは「洗浄」ではなく「頭皮マッサージ」のつもりで優しく行う
- ● タンパク質だけでなく、それを代謝する「亜鉛・ビタミン」もセットで摂る
- ● 髪の修復タイムである「睡眠時間」を削らない
参考ページ:エクステを取ったら抜け毛が!地肌に負担をかけてる?
7. 自己判断せずに専門家の意見を仰ぐ重要性
インターネット上には、抜け毛に関する膨大な情報が溢れています。「このサプリで生えた」「民間療法の○○が効く」といった口コミを目にすると、つい試したくなる気持ちは痛いほど分かります。しかし、原因が病気にある場合、誤った自己判断は症状を悪化させるだけでなく、重大な疾患の発見を遅らせることになります。
ここでは、なぜ専門家の診断が必要なのか、自己流ケアのリスクと対比しながら解説します。
市販の育毛剤が逆効果になるリスク
「とりあえずドラッグストアで育毛剤を買ってみよう」という行動は、一見前向きに見えますが、実は大きなリスクを孕んでいます。
例えば、頭皮が炎症を起こしている状態(脂漏性皮膚炎など)で、アルコール濃度の高い育毛剤を使用するとどうなるでしょうか?強い刺激によって炎症が悪化し、かゆみや痛みが激増し、結果として抜け毛が加速する恐れがあります。また、原因が「甲状腺機能低下症」であれば、いくら頭皮に栄養を与えても、根本的なホルモンバランスが改善しない限り、抜け毛は止まりません。
市販薬はあくまで「健康な人が予防的に使うもの」や「軽度な症状向け」に作られていることが多く、病的な抜け毛に対する治療効果は限定的であることを理解しておく必要があります。
「様子見」が招く不可逆的な脱毛
脱毛症の中には、時間の経過とともに毛根が完全に機能を失い、二度と髪が生えなくなってしまうタイプ(瘢痕性脱毛症など)が存在します。また、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)も進行性であり、治療開始が遅れれば遅れるほど、元の状態に戻すのが難しくなります。
「忙しいから」「そのうち治るだろう」と放置している間に、治療のゴールデンタイムを逃してしまうことは、何としてでも避けなければなりません。
以下の表で、自己判断によるケアと、医療機関での治療の違いを整理しました。
メンタルケアとしての受診の意義
抜け毛の悩みは非常にデリケートで、家族や友人にも相談しにくいものです。一人で悩み続けていると、そのストレスがさらに抜け毛を増やすという悪循環に陥ってしまいます。
専門医に相談することは、単に薬をもらうだけでなく、「自分の状態を正しく理解してくれる人がいる」という安心感を得ることにも繋がります。「これは病気の症状だから、治療すれば良くなる」と医師に言われるだけで、心の重荷が下りる患者さんは少なくありません。
参考:【女性向け】抜け毛がひどい原因が知りたい。これって病気?
8. 抜け毛の増加が病気の初期サインである可能性
髪は生命維持の優先順位が低い器官であるため、体調の変化が真っ先に現れる場所でもあります。つまり、抜け毛の増加は、まだ自覚症状が出ていない深刻な内臓疾患や全身疾患の「初期警報」である可能性があるのです。
ここでは、抜け毛とセットで現れやすい、見逃してはいけない身体のサインについて解説します。
生活習慣病と血流不全の関連
糖尿病や高脂血症(脂質異常症)といった生活習慣病は、ドロドロの血液や血管の動脈硬化を引き起こします。頭皮には無数の毛細血管が張り巡らされており、ここから髪へ酸素と栄養を届けていますが、血流が悪化すれば当然、髪への供給ルートは断たれます。
以下のような症状がある場合、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が進行し、その二次的な症状として抜け毛が起きている可能性があります。
- 喉が異常に乾く、トイレが近い: 高血糖(糖尿病)の典型的な症状です。
- 健康診断でコレステロール値や血圧が高いと言われた: 全身の血行不良が進行しています。
- 急激に太った、または痩せた: 代謝異常やインスリン抵抗性の変化を示唆します。
胃腸の不調と栄養吸収障害
「しっかり食べているのに、髪がパサパサで抜ける」という場合、胃腸の働きが低下し、摂取した栄養が体内に吸収されていない可能性があります。
慢性的な下痢や胃炎、あるいは過敏性腸症候群などは、栄養失調状態を引き起こします。特に、亜鉛や鉄分は吸収されにくいミネラルであるため、胃腸の状態がダイレクトに影響します。髪の悩みと同時に、胃もたれや腹痛が続いている場合は、消化器内科での検査も視野に入れるべきでしょう。
梅毒などの感染症による脱毛
近年、患者数が急増している性感染症の「梅毒」も、進行すると脱毛症状(梅毒性脱毛)を引き起こすことがあります。感染から数ヶ月後に、虫食い状に髪が抜けたり、眉毛が薄くなったりするのが特徴です。
痛みやかゆみがほとんどないため見過ごされがちですが、手のひらや足の裏に発疹がある場合や、心当たりがある行動があった場合は、ためらわずに検査を受けることが重要です。早期に抗生物質で治療すれば、脱毛も完全に回復します。
全身からのSOSサイン一覧
- ● 急激な体重変化 + 抜け毛 → 甲状腺疾患や糖尿病の疑い
- ● 慢性的や下痢や胃痛 + 抜け毛 → 吸収不良による栄養欠乏
- ● 原因不明の発疹 + 虫食い状の脱毛 → 感染症の可能性

9. 女性特有の疾患が抜け毛を招くケース
女性の体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモンのバランスによって繊細に制御されています。このバランスが崩れる婦人科系の疾患は、男性ホルモンの影響を相対的に強めてしまい 、結果として抜け毛や薄毛を引き起こすことがあります。
ここでは、女性が特に注意すべき婦人科系疾患と抜け毛の関連について解説します。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスク
若い女性にも増えている「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、排卵がスムーズに行われなくなる疾患です。この病気の特徴の一つに、血中の男性ホルモン(テストステロン)値が高くなることが挙げられます。
女性の体内にも微量の男性ホルモンが存在しますが、PCOSによってその量が増えすぎると、以下のような「男性化徴候」が現れます。
- 頭髪の脱毛: 生え際や頭頂部が薄くなる、FAGAのような症状が進行します。
- 多毛: 逆に、口周りのヒゲや手足の毛、背中の毛などは濃くなることがあります。
- ニキビ・肌荒れ: 皮脂分泌が過剰になり、治りにくいニキビが増えます。
「生理不順が続いているけれど、病院に行くのは面倒」と放置している間に、薄毛が進行してしまうケースも少なくありません。月経周期の乱れと抜け毛が重なる場合は、婦人科でのホルモン検査が必要です。
更年期障害とHRT(ホルモン補充療法)
閉経前後の更年期(おおむね45歳〜55歳)には、髪の成長を守っていたエストロゲンが急激に減少します。これにより、髪のコシがなくなり、本数が減少し、一本一本が細くなる「びまん性脱毛」が起こりやすくなります。
更年期障害の治療として行われるHRT(ホルモン補充療法)は、ホットフラッシュなどの症状緩和だけでなく、抜け毛の抑制や肌のハリ向上といった副次的なメリットも報告されています。辛い症状を我慢せず、婦人科で相談することは、髪の健康を守ることにも繋がるのです。
以下の表で、女性特有のトラブルと抜け毛の特徴をまとめました。
ピル服用と抜け毛の関係
避妊や生理痛緩和のために低用量ピルを服用している方も多いでしょう。基本的にピルはホルモンバランスを安定させるため、ニキビや多毛の改善に役立ちますが、体質に合わない種類のピルを服用した場合、稀に「アンドロゲン(男性ホルモン)活性」の高いプロゲステロンの影響で、抜け毛が増えることがあります。
また、ピルの服用を中止した直後に、一時的に抜け毛が増えることもあります(出産後と同じようなホルモン変動が起きるため)。これらは通常一過性のものですが、不安な場合は処方医に相談し、ピルの種類を変更するなどの対策を検討してください。
10. 抜け毛を減らすための正しい医療機関の選び方
「抜け毛が心配だから病院に行こう」と決心しても、次にぶつかる壁が「何科に行けばいいの?」という問題です。皮膚科、内科、婦人科、さらには薄毛専門クリニックなど、選択肢が多くて迷ってしまいますよね。
適切な診断と治療を受けるためには、自分の症状に合わせて最初の入り口を正しく選ぶことが非常に重要です。ここでは、症状別の医療機関の選び方をガイドします。
まずは「皮膚科」か「専門クリニック」か
基本的には、頭皮に明らかな異常があるかどうかで判断します。
- 一般皮膚科を選ぶべきケース:
「頭皮が赤い」「フケがひどい」「かゆみや痛みがある」「円形脱毛症ができた」といった症状がある場合。これらは保険診療の範囲内で、塗り薬や飲み薬による治療が受けられます。皮膚の病気としてのアプローチが必要です。 - AGA/FAGA専門クリニックを選ぶべきケース:
「頭皮はきれいだが、髪が薄くなってきた」「徐々にボリュームが減っている」「より積極的に発毛させたい」という場合。これらは美容・審美的な側面が強いため、自由診療(保険適用外)となることが多いですが、遺伝子検査や発毛メソセラピーなど、より専門的な選択肢が用意されています。
内科的疾患が疑われる場合のルート
記事の前半で触れたように、だるさ、動悸、急激な体重変化などを伴う場合は、抜け毛はあくまで「症状の一つ」に過ぎません。この場合、優先すべきは全身の治療です。
- 内科・内分泌内科: 甲状腺の腫れや、全身の倦怠感が強い場合。血液検査でホルモン値をしっかり測ってもらいましょう。
- 婦人科: 生理不順や更年期障害の症状が強い場合。女性ホルモンの補充や漢方薬による治療が抜け毛改善に繋がります。
- 心療内科: ストレスによる不眠や食欲不振が著しい場合。メンタルの回復が、結果として円形脱毛症などの回復を早めます。
「迷ったらここ」を決めるための指針
どうしても判断がつかない場合は、まずは近くの「皮膚科」を受診するのが無難です。「抜け毛が気になるのですが、頭皮の炎症なのか、内臓の問題なのか心配です」と伝えれば、医師が頭皮を診察し、必要に応じて血液検査を行ったり、適切な他科へ紹介状を書いてくれたりします。
一番良くないのは、どの科に行けばいいか迷いすぎて、結局どこにも行かずに放置してしまうことです。まずは専門家の門を叩くこと。そこから解決への道筋が必ず見えてきます。
病院選びのフローチャート
- ● 頭皮にかゆみ・赤み・円形脱毛がある → 一般皮膚科(保険診療)
- ● 体調不良(だるさ・体重変化・生理不順)がある → 内科・婦人科
- ● 頭皮は健康だが、薄毛・抜け毛を本格的に治したい → 専門クリニック(自由診療含む)
抜け毛は体からのメッセージ。早期発見と適切なアクションで未来の髪を守りましょう
ここまで、抜け毛の裏に潜む病気や原因、そして対処法について詳しく解説してきました。最後に、この記事でお伝えしたかった重要なポイントを振り返ります。
抜け毛は、単なる「美容的な悩み」ではなく、あなたの体が発している「健康状態のサイン」である可能性が高いということです。甲状腺の異常、貧血、自己免疫疾患、ホルモンバランスの乱れなど、髪のトラブルを通して体は必死にSOSを出しています。自己判断で市販のケア用品を使い続けたり、「そのうち治るだろう」と放置したりすることは、根本的な病気を見逃すリスクに直結します。
明日から、いえ今日からできる具体的なアクションとして、まずは以下の2つを試してみてください。
- 抜け毛の「毛根」を観察する: 今日のお風呂上がりやブラッシング時に、抜けた髪の根元を見てみましょう。黒かったり、細くとがっていたりしませんか?
- スマホのカレンダーに記録する: 「今日は抜け毛が多かった」「最近だるい」といった簡単なメモを残すだけでも、受診の際に医師への貴重な情報となります。
不安を感じることは決して恥ずかしいことではありません。専門医の診断を受け、原因がはっきりするだけでも、心の霧は晴れていくはずです。あなたの髪と健康を守るために、勇気ある一歩を踏み出してください。適切なケアを行えば、髪は必ず応えてくれます。
抜け毛と病気に関するよくある質問
A. 残念ながら、シャンプーだけで病気が原因の抜け毛を完治させることはできません。
シャンプーはあくまで頭皮環境を整える補助的なものです。甲状腺疾患や貧血、AGAなどが原因の場合、医療機関での適切な治療(投薬など)が不可欠です。
A. 個人差はありますが、1日50本〜100本程度なら正常な生理現象です。
秋などの季節の変わり目には200本近く抜けることもあります。本数よりも「短く細い髪」や「毛根がいびつな髪」が増えていないか、質に注目してください。
A. 多くの場合は回復しますが、時間がかかることがあります。
ストレス性の「休止期脱毛」であれば、原因解消から半年程度で戻ることが多いです。ただし、円形脱毛症などは専門的な治療が必要になるケースもあります。
A. AGA/FAGA(加齢や遺伝による薄毛)の可能性があります。
一般的な血液検査ではAGAのリスクは分かりません。病気ではなくても進行性の脱毛症である可能性があるため、薄毛治療専門のクリニックへの相談をおすすめします。













